あなたの「目標」を達成するための、最も効率的な方法をご存じですか?
それは、あなたがいつも「いい気分でいること」を選択しようとすることです。
今回は、ある人物(Aさん)が「目標」を達成しようとする様子を、俯瞰的に見ることによって、その方法を理解してみることにしましょう。
これまでにこの講座で学んできた内容を、ここでよく思い出してみてくださいね。
状況を、客観的に眺めてみよう。
ある日、Aさんは「望まないこと」にぶつかりました。
Aさんがぶつかった「望まないこと」は、Aさんにとって、酷くつらいと感じるものでした。
そのとき、頭の中では、こんな『不穏な声』がささやいているように思えたのです。
人生というのはこのように、つらく、苦しく、不愉快なものだ。
君はこの事態に、一生苦しむことになるだろう・・・。
しかしAさんは、現在の問題が自分にとってどのように不愉快であるか・どれほど自分を苦しめているのか・他人の目にはどのように映るのかなどということについて悩んだり、落ち込んだりしていても、良いことは何もないなと思いました。
Aさんは、嫌な気分になるようなことを考えるのをやめて、「いい気分」になれるようなことをしていくことが、自分にとって大切だということを理解していたのです。
Aさんは、深呼吸をしてこう考えました。
「確かにこれは望まないことだが、自分がより良い場所に向かうための、きっかけになるのかもしれない。」
Aさんは、自分が心から望んでいることが何であるのかということや、現在悩んでいることを解決するための「目標」について、この機会にしっかりと考えてみることにしました。
しかしそのとき、またもや『不穏な声』がささやくように思えました。
君がそんな望みを叶えるなんて、到底無理だと思わないかい・・・?
Aさんはその声を無視して、自分のためになることをしようと思いました。
Aさんがつらくなくなる状態・問題から解放される状況になるためにはどうすればいいのか、というところをとらえることに集中しようとしたのです。
さて、自分の望みをあるがままに理解したAさんは、その日から「現在のつらいところ」を見るのをやめにしました。
Aさんは、自分の「目標」が達成された状態の未来が必ずやってくることを前提に物事を考え、「目標」が達成されたときのための計画や準備を開始することにしました。
すると不思議なことに、いまのAさんにとって必要なものや、Aさんが望んでいたような情報が、次々とAさんの元に集まってきました。
Aさんの周りの世界が、まるでAさんの目標達成のために動き出しているような、そんなパワーを感じ始めたのです。
「現状」は昨日と変わらないままでしたが、辛い(つらい)はずの「現状」の中でも、Aさんは「いい気分」を感じていることができました。
しかししばらくすると、つらい「現状」が悪化したかのような出来事が目の前で展開され、Aさんの頭の中でまたもや『不穏な声』がささやくように思えました。
こんな酷い状況で、いったいどうやって、そんな目標を達成するつもりなんだい・・・?
だけど、Aさんは理解していたのです。
たとえそうは見えなくても、「すべてはうまくいっている」ということを。
「現状」が悪化しているように見えたとしても、本当にそうであるとは限りません。
Aさんはただ、現れた「現状」にどう対応するのかということを、自分の意思で決定していけばいいだけだと考えました。
それにAさんは、「そんなに簡単に物事がうまく運ぶわけではないだろう」というふうに、現実的な判断をすることが、きちんとできていたのです。
Aさんの「現状」は、そのうちに少しずつ良くなっていきました。
しかし、しばらくの間、Aさんががっかりしてしまうような出来事はなくならず、そのたびにあの『不穏な声』はAさんの心をくじこうと試みました。
ところが、Aさんの前向きな態度は変わらず、とても根気強いものだったのです。
Aさんはときどき自制心を失いそうになったり、くじけそうになったりする自分を励まし、癒す時間を大切にしました。
自分の力でコントロールできないことについては、「これは自分が目標を達成するために、必要であるからこそ起こっているのかもしれない」と前向きに考えて対応することにし、ネガティブになりそうな自分を常に立て直そうとしたのです。
そのように、自分にとって良いと思える「選択」を繰り返し、いい気分でいようとすることを「思い出す」という不断の実践を続けていたAさんの「現状」は、いつの間にか格段に良くなっており、『不穏な声』はむなしくうすれていきました。
Aさんは、自分を認めて尊重するということを大切にしていたので、「まだ目標が達成できていない」ということにはこだわることなく、現時点の自分に満足し、充実を感じていることができたのです。
やがて、Aさんに驚くべきことが起こります。
Aさんがかつて「目標」としていたことは、とっくに手に入っているということに、気づいたのです。
むしろ、もう次の「目標」を追うことに夢中になっていたものですから、そんなことはあたりまえで、Aさんにとって大したことではなくなっていたのでした。
―――さて、このAさんがとってきた方法が、目標達成への最短距離であり、最も効率的な方法であったと仮定したとして、あなたはいま、この例のどの時点のどのような状態で、どんな「気分」でいるでしょうか。
あなたがネガティブな状況に置かれたと感じた瞬間に、あなたはいつも、人生の分かれ道に立っているのかもしれません。
次項で詳しく説明していきましょう。