「いい気分」になりたい、楽になりたい、と考えながら、実際にはなんだかどんどん苦しくなっている、ということはありませんか?
自分が「望んでいること」に関心を向けていたい、と願いながら、実際にはなぜか「望まないこと」にばかり気をとられてはいませんか?
どうして、そんなふうになってしまうのでしょう。
それはあなたが、あなたのネガティブな「感情」のことを、無視しようとしたり、自分の中から追い出そうとしたりするからなのです。
ネガティブな「感情」ほど、認めてあげよう。
ネガティブな感情に苦しむということは、すべての人にとって、めずらしいことではありません。
前回までに学んだように「自分の状況を悪くとらえない」ということが、とてもできそうにないような、辛い(つらい)場面もあるでしょう。
そういったときには無理に、ネガティブを感じてしまうことを、やめなければならないと考える必要などありません。
むしろ、そういった「感情」ほど、あなた自身がきちんと理解し、認めてあげようとしなければ、楽にはなれないはずです。
「思考」は注目すると、大きくなるとご説明したのを、覚えているでしょうか?
(「気分」が悪いときの頭の中 参照)
「思考」とは反対に、「感情」は、無視されると自分の存在を頻繁にアピールしようと試みるようになり、追い出そうとされると、巨大化して声を張り上げるようになります。
あなたの「感情」は、それがどんなものであっても注目し、気づいてやり、そこに居ることを許し、認めてあげることにより、小さくしていくことができるのです。
カウンセリングの大家、カール・ロジャーズを解する諸富祥彦は、
著書『生きるのがつらい「一億総うつ時代」の心理学』の中で、以下のように語っています。
著書の中ではさらに、
●つらさや弱さの存在を認め、それに居場所を与え、言い分を聴いていくこと。
●自分の内側のさまざまな心の動きを少し距離を置いて「観照」していくこと。
●自分の身を危険から守るためにも、弱音を吐けること。助けを求められること。
●「矛盾した気持ち」や「自分の考えに対する批判的な気持ち」がわいてきても、どちらも自分の中でわきあがってくる本当の気持ちだ、と認めていくこと。
などが、提案されています。
あなたの中で生まれた「感情」は、その瞬間に、それがどんなものであっても、あなたの大切な一部になると考えてみましょう。
あなたが良い「感情」だけを感じていたいと願い、悪い「感情」を毛嫌いしたり、追い払おうとしたりすることは、自分で自分の一部を切り離そうとする行為なのですから、さらに苦しくなってしまうのも無理はありません。
あなたがネガティブを感じたときには、すぐにその「感情」の1つ1つを、まるで意思をもった存在のようにとらえ、そこに居るのをきちんと認めてみてください。
ポイントは、「価値評価を一切交えない」ということです。
その「感情」について、あなたが「良いとは思えない」「こんなのはダメだ」という厳しい判断をするのではなく、あるがままに認めてから、徐々に手放していこうとすることが大切 なのです。
あなたはそれを繰り返すうちに、それが「自分の気持ちを大事にする」ということであり、あなたが唯一楽になっていく方法であるということを、理解することができるでしょう。
そして、その先にあるものを、ちゃんと見つめることが大切です。
次項で詳しく説明していきましょう。